第16回 渡邊 君代氏 (雅号、稚井)



渡邊君代氏

今回のインタビュ-は、玉川町中村の書道家渡邊君代(雅号、稚井)さんをお訪ねしました。
渡邊さんは、91歳だそうですが、おしゃれで若々しく、上品なお話し振りがとても印象的でした。また、書道家としてたくさんの作品を製作されていて、それらの作品に囲まれた雰囲気のある部屋でお話を伺いました。


スタッフ:
今日は、長年書をたしなんでいらっしゃった渡邊さんの暮らしについてお聞きしたいと思いまして、参りました。宜しくお願いします。
渡邊さん:
「この人に聞く」なんて、このごろは私も年をとってしまいましたから、十分なお話はできないと思いますよ。今は毎日庭の花の手入れを楽しんでいる状態ですから。
スタッフ:
いえいえ、大丈夫ですよ。それではまず、渡邊さんのお若い頃のお話から伺いましょうか。
渡邊さん:
若い頃は、事務所を預かってお勤めをしていました。車の運転をしていろんなところへ行きましたよ。車で通れるかなと思うようなところへも行ったりして、今思えば、よく行けたなと思います。
仕事から帰ってからは、急いで食事の支度などしてほんとに忙しく働きました。
スタッフ:
お若い頃から車の運転免許をとっていらっしゃったのですね。代議士さんの事務所に長年お勤めになり、忙しい中でも書に親しまれて、すごいことですね。
渡邊さん:
若い頃からいろんなことをやりました。洋裁や編み物、お茶やお花、料理も結構得意でいろんな人に持っていってあげては喜ばれましたよ。子どもや孫たちも私の料理を喜んでくれるのでそれがうれしくて、いろんなものを一味工夫して作って食べさせました。
このごろは料理はしなくなりましたが、洋裁のほうはまだぼつぼつしています。 この間もエプロンやノースリーブのブラウスなどたくさん縫いました。 また、編み物も少しだけしていて、子や孫たちにたくさんレッグウォーマーを編んで、喜んでもらえて何よりの励みになりました。
そうそう、てかがみの会にもよく参加しました。以前は文章も書いていたんです。
スタッフ:
いろいろなことに取り組んで来られてすごいですね。書道はいつごろから始められたんですか。
渡邊さん:
昭和45年頃からでしょうか。書界社の真鍋士鴻先生の門下で習得し、県展や書界展、毎日展や東京の奎星展などに出品しました。また、玄修書道教室という名で書道教室を開き、何人もの弟子を教えました。 81歳のときに、「81歳 81点」という個展を河野美術館で開き、書画ともに「筆墨三昧」という一冊にまとめることができたのは、いい思い出です。
スタッフ:
これを見せていただきますと、書だけでなく水墨画もなさっていたんですね。これは宝物ですね。
渡邊さん:
小さい頃から絵や書が好きだったから、続けてこられたと思います。 今は、庭の花を育てて手入れするのが、何よりの楽しみになりました。 山野草を愛でて、その可憐さに心惹かれ、穏やかに暮らしています。 また、書道の作品展には、盆栽などをお貸しして喜ばれているんです。書の作品の前に松の盆栽など置くと、それがとてもよく映えるのよ。
スタッフ:
それではお庭へ出て、その松やいろいろなお花を見せていただきましょうか。
渡邊さん:
これは宇宙メダカなんですよ。向井千秋さんが宇宙へ連れて行ったメダカの子孫なんです。
スタッフ:
わあ、ほんとほんと、いるいる。
渡邊さん:
こちらは、特に山野草を集めた箱庭なのですよ。
かえるがいるでしょう。こんな風に遊びごとをして楽しんでいるんです。
スタッフ:
わあ、かわいいですね。
渡邊さん:
こちらは老爺柿。実がなっているでしょう。小さな実ですけど。
(そのとき、前の田んぼからかえるの鳴き声が聞こえてくる。私たちの話に加わりたいのかな。)
こちらのトラノオという白い花は、鳥が運んできたのか植えたのではないけど、こんなにきれいに咲いているのよ。
このサボテンは、昨日ピンク色に大きく咲いた名残です。
スタッフ:
この紫色の花は何というんですか。
渡邊さん:
名前はわからないんだけど、かわいいから買ってきたのよ。
この盆栽の松を書道展に貸し出しているのです。こちらの五葉の松もね。
スタッフ:
まあ、いい枝振りですね。これなら作品も映えるでしょう。
お庭を一巡りし、写真撮影もして再び部屋に戻りました。
お茶をいただきながら、座右の銘をお聞きする。
渡邊さん:
「晴耕雨読」を心がけている感じかな。気ままにやっています。今読んでいる本はこれです。
と言って持ってきてくださった本は、息子さんが送ってきてくれたという 「細胞から若返る生き方」・・・・・・(う~ん、脱帽。)
いろんなものをよく食べて、それも何を食べてもおいしいのよ。それに水がいいからこんなに元気なんだと思うんです。水はね、鈍川木地の山の湧き水を使っているから、とてもおいしいし体にもいいんだと思う。これってものすごい贅沢なことよね。
スタッフ:
自然のままのお水はいいですね。それでは、最後に渡邊さんが日々心がけていらっしゃることをお聞かせください。
渡邊さん:
孫たちが「ばあちゃん、ばあちゃん。」といってくれるので、こういうのを作って置いておいてあげようとか、お茶を習っている孫には、お茶道具の一つも買っておいてやろうとか、いろいろ思いますが、とにかく元気でいることがいちばんだと思っています。
娘が、おいしい料理を作ってくれるのでしっかり食べていますし、自然の水しか飲まないので元気でおれると思います。
娘が来るまでに掃除もしとかなきゃとか思って、気をつけてやっています。
 
スタッフ:
年齢を感じさせないお話と、日ごろのゆったりとした暮らしぶりに、私たちも豊かな心なごむひとときを過ごさせていただきありがとうございました。

たくさんのお話をお伺いでき、瞬く間に時間が過ぎていました。 今回、渡邊さんが書を書いていらっしゃるところも拝見したかったのですが、残念で心残りです。 今後ともお好きな庭のお手入れをなさりながら、いつまでも若々しくお元気でお過ごしください。本日はありがとうございました。