第13回 山崎 静好氏



山崎 静好氏

9月に入り、台風が過ぎた秋晴れの空。
玉川でも龍岡あたりは、すでに稲刈りが終わり、新米が出始めの頃、玉川湖畔の里で山崎静好氏にお会いしました。
山崎静好氏は玉川町龍岡下(小川)生まれ。NPO玉川サイコーのメンバーでもあります。


スタッフ:
いいお天気ですね。この近くに山崎さんのご自宅や畑があるとか。畑に案内していただけますか?
(近くの畑へ案内いただく)
山崎さん:
僕はいま42歳ですが、農業とは関係のない別の仕事をしながらの兼業農家でして、季節にあわせていろいろと面白そうな品種を作っているんです。
スタッフ:
めずらしいものがありますね。これはなんですか?
山崎さん:
ソルゴーと言って、コンパニオンプランツですね。この夏は、たまご型ズッキーニと、赤とオレンジのミニパプリカ・・・。 この小さいのは、食用ヒョウタンです。トカドヘチマも植えています。 猛暑で弱ったカラダにぴったりの、栄養価の高い野菜です。


土づくりと露地ものにこだわって、いろいろと専門書を調べたり、ネットで種を探したりして、珍しい品種のほかに定番野菜とあわせて育てています。
スタッフ:
どうして、そういう珍しいものにこだわっているのですか?
山崎さん:
見慣れない野菜は、取引先のお店の人にも珍しがられて、高く売れるんです。
おなじものを大量につくるのではなく、少量多品目でニーズにこたえるという方法をとっています。
またそのほうが失敗してもカバーしやすいので。 あとは、珍しい野菜を見たり味わったりしたときの、まわりの人たちの反応を見るのが楽しい…これが一番の理由ですかね。
スタッフ:
販路はすでに持っていらっしゃるのですね?
山崎さん:
地元のほかに松山や東京とか、知り合いのお店に卸して、直接取引しています。
スタッフ:
農業とはどういうかかわりなのですか?
山崎さん:
うちは昔から兼業農家で、子供の頃から農作業の手伝いをしてました。しかし農業をやるなんてまったく考えていませんでした。それが30代になったころ、月明かりが玉川ダムの水面にゆれる光景を見て、地元の魅力にはっと気づいたのです。龍岡で生まれ育ったのに、気づくまでだいぶ時間がかかりましたけど。
「この場所で出来ることは何だろう?」 
あれこれ考えた結果、まずは野菜を作ってみようという考えに至ったわけです。子供のころの経験もあるし、ちょうど殺虫剤混入輸入ぎょうざ事件で騒がれてた時期で、国産が見直されてたというのも一因です。そのために県立農業大学校に通いはじめました。ここで自分の農業に対する意識が変わりましたね。 学校では生産者の圃場を視察したり、土や肥料の知識などを学んだのですが、とにかく想像してた以上に奥が深いんです。野菜や果樹は多種多用で、時代とともに新品種も生まれる。ひとつの品種をみても、用途別に加工用や生食用があったり、栽培方法もこれが絶対という正解がない。
たとえば、ホームセンターの野菜たねコーナーを見てみると気づくはずです。
「おなじ白菜でも何でこんなに種類があるの?何がどう違うの?」と。
あと秋冬野菜の代表として、カブや大根がありますが、これもご当地野菜としていろいろな種類があります。珍しい品種のたねは、お店では売られてないことが多く、ネットで取り寄せられるので便利ですね。そのまま産直市に出したり、漬物に加工して出しています。
しょうがや柚子といった食材と組み合わせることで、バリエーションに富んだ漬物が出来上がります。年末に赤と白のカブの酢漬けを、正月用と入れたパッケージで出したところ、普段よりも売上が伸びました。
スタッフ:
野菜をつくりはじめて気づいたことはありますか?
山崎さん:
見慣れないものを作れば高値で売れると単純に考えてスタートしたんですが、あんまり珍しすぎるのは、一般の消費者は敬遠する傾向が強いです 。
お店向けでも安い食材でいいとか、調理しやすいサイズのがいいとか、決して目新しさだけでは、売れないことがわかったんです。 都会と地方では、当然ながらマーケットの規模も違うしニーズの変化スピードも違う。だからといって単に迎合した野菜づくりをするのではなく、付加価値をつけたりこだわりを持って独自色を出していく。
みんなの興味をひくものがあれば、玉川に足をはこんでもらえるかもしれない。そこでお金を使ってくれる仕組みができれば、地域のお金が循環してくる。今後いろいろイベントがありますが、サイクリングのイベントや愛媛国体などのイベントをきっかけに地元地域が盛り上がっていくためには、まだまだ足りないものが多い。それを考えると、もう少しなんとかしなければという気持ちになります。
あと、今後もっと本格的に加工をやってみたいと考えてます。
スタッフ:
最近、農業の6次化などが言われていますけど、山崎さんがやりたい農業って、その6次化みたいな感じですか?
山崎さん:
そうですね。たとえば食品乾燥機をつかって、野菜の粉末を作って、いろいろな加工品を作ってみたらどうだろう?とか。旬の野菜を乾燥させて保存性を高めてみたり、甘み・香りの強い品種の粉末なら、お餅や麺、お菓子やドリンクなど活用の幅が広がるな、とか。思い巡らすといろいろなアイデアがわいてきて楽しくなります。
スタッフ:
玉川を含めて今治にはいろいろな食材がありますもんね。
山崎さん:
そうそう。柑橘をはじめ玉川のブルーベリーや朝倉のイチゴや梨とか・・・今治には海もあるし食材の宝庫ですから。この龍岡地域も、賑わうのは桜の咲く季節だけなのはもったいないなとずっと思っているんです。あとサイクリストの姿も増えてきましたし・・・。
スタッフ:
山崎さんは、自転車は乗るんですか?
山崎さん:
高校生当時は自転車通学でしたが、今はまったく。
近頃玉川でも増えてきたサイクリストを見ていると、玉川に立ち寄れるものを提供できればと思いますね。
スタッフ:
少し賑やかになってきた感じではありますが、山崎さんは、この玉川がどんな町になってほしいと思いますか?
山崎さん:
国道317号が開通してからもうすでに10年以上経ち、交通量が増えました。今治と松山の中間に位置し、車ででかけるにはちょうどいい距離の場所なので、もっと人を呼べると思うんです。
しかし立ち寄りたくなるものが乏しいのか単なる通過点になっているようで、もったいない気持ちが強い。魅力あるものを見つけたり創ったり、盛り上げていきたいですね。
せっかく玉川サイコーも立ち上がったことですし。
スタッフ:
交流人口が増加するのと。場づくりですかねぇ。
場づくりと言えば、実際に山崎さんは、休耕田にお花を植えていらっしゃいますよね?
山崎さん:
そうですね。自分サイズでもできることからと思って。田んぼにヒマワリを植えてみました。


この夏もけっこう人に喜んでもらうことができました。今度は、玉川湖畔の里の近くに、菜の花を咲かせる計画中です。 たくさんの花は虫だけでなく人も惹きつけます。キレイに加えて非日常を感じられる魅力があるんだと思います。そうして人に喜んでもらうことがとても嬉しいです。 NPO玉川サイコーのメンバーになったのも、それも理由ですね。自分でできることはしれているので、みんなでできることをいろいろとしてみたいです。
スタッフ:
それは力強いです。これからも一緒にやっていきましょう。      
最後に好きな言葉をおしえてください。
山崎さん:
『散る桜 残る桜も散る桜』
良寛の辞世の句なんですが、意味を知れば、長いようで短い人生、限られた「いのち」の中で今をいかに生きるかを考えさせられます。ありがたいことに五体満足で生かされていることを改めて気づかせてくれる、そんな言葉です。
スタッフ:
今日はお忙しい中、ありがとうございました。
山崎氏の圃場から、玉川湖畔の里へ戻ると、ちょうどトレーニングされていたMTB(マウンテンバイク)のライダーの方々が休憩中。玉川にあったらいいもの、ダム湖畔にあったらいいもの談義に、再び花が咲きました。山崎氏には、地域に生まれ育って、これから先も地域を支えていってほしいと願わずにはいられませんでした。
ますますのご活躍を!!