万葉の森(52) 楢原山の植物

ジャケツイバラの花(さいかち)

五月に咲いていた花です。美しい左右相称形の黄色花はとてもきれいです。蛇結(じゃけつ)茨(いばら)の名前は茎がつる性で、曲りくねっていて、あたかも蛇が結ばれてとぐろを巻いたようでつけられたものです。かぎ状の鋭いとげが蔓いっぱいについていて手では触れません。有毒植物で、種子をマラリヤの治療・駆虫に用いるとありますが素人では使用できません。(広辞苑・牧野植物図鑑)

ジャケツイバラの豆果

豆果は長楕円形、扁平、無毛、長さ七~一Oセンチ、幅約三センチ、一〇個内外の褐色、楕円形の種子が入っています。 さて、皀莢(さいかち)(万葉名)には集中一首に二種の植物が登場しています。ジャケツイバラとサイカチです。どちらもまめ科の木本植物です。前者は高さ二メートルそこそこの落葉、後者は高さ二○メートル以上になる落葉高木で、両者とも同じくトゲがありますが前者ほど密についていません。五~六月に淡黄緑色の小花をつけます。花が終ってから長さ三〇センチ余りの平たい豆果を生じ、ゆがんだ莢の中に平たい種子ができます。新葉は食用になり、豆果は石けんの無かった時代に物を洗うのに用いられました。また生薬名で莢を皀莢(そうきょう)、種子を皀角子(そうかくし)と呼ばれて去痰(きょたん)やはれものに服用されています。どちらを選ぶかは皆さんでご判断ください。

トコロ、ヤマノイモ

どぢらも万葉の森に自生しています。万葉人は食べられるヤマノイモを選ばないでトコロ(万葉名・ところづら)を選んだのでしょう。どちらもやまいも科の植物ですが、ヤマノイモ、ナガイモは葉が対生、トコロの仲間はいずれも葉が互生で見分けることができます。葉の形でも見分けられます。筆者が子どもの頃、茎が肥大し横にのびるトコロを掘りやすいので、ヤマノイモと間違えて持ち帰って祖母に教えられたことを思い出します。「万葉の森」(26)にトコロの記事はありますのでご覧ください。

万葉の池の水生植物たち

アサザは万葉名あざさで、県内でも松山市、大洲市、御荘町の三か所しか自生地は見つかっていません。万葉の池で一番弱っているのはアサザです。魚がいる時は魚に、バッタのいる時はバッタに食べられて見るに忍びない状態です。一番強いのはツルヨシでいくら切り込んでも大丈夫です。次に強いのは万葉植物ではないブラジル産のウォーターポピーです。魚も虫も食べようとしません。万葉の池には不向きの水草です。水面に葉を浮かべるデンジソウ、ヒルムシロ、ヒシなどは健在、かやつりぐさ科のサンカクイ、クログワイ、フトイなどは五〇センチから一五〇センチに生長し、池の中心になっていますが、強風に遭うと植木鉢のまま倒れることがあります。万葉名ぬなはと呼ばれるジュンサイは栽培不可能のようです。自生地は桜井孫兵衛作の池ですが、冷たい底水、水深五〇センチ以上の水があるような池でないと育たないようです。