11、竜岡下



(1)玉川ダム

玉川ダムは、治水(洪水調節)農業用水・上水道用水・工業用水の四目的をもった多目的ダムとして、愛媛県が昭和 39年4月に調査を開始し、41年4月に着手。46年3月に完成したもので、今年で完成後25年になる。
 ダムの位置は玉川町竜岡下鍛治屋丁4番地6。標高(堤頂の)160m・堤高56m・堤長260m・重力式コンクリー トダムである。
湛水面積は、主に鍛治屋ど妙見前地区で0・64平方キロメートル・集水面積は元竜岡村全域で、38・1平方キロメートルで、 総貯水量は990万平方キロメートルである。
 ダム建設事業費は37億6千万円。上水道用・工業用水用施設費を含めると、62億3700万円となる。
蒼社川は、高繩山系白遺(標高1159m)に源を発し、途中支流木地川と合流し、今治市を貫流して瀬戸内海 に注ぐ流域面積102・8平方キロメートル、流路延長25平方キロメートルの二級河川である。
この河川は、昔から数多くの洪水による大災害を起している。
 このため歴代の今治蕃主は治水に専念し、宝暦年間(1751 ~1763)に13年の歳月と莫大な費用を投じて、現在の堤防 を完成した。
しかし、その後心明冶26年(1893)の大洪水をはじめ、たびたび洪水の被害を受けてきた。
一方、蒼社川流域には、この川によって灌漑されている水田は1300haあるが、昭和9年(1934) 大旱魃をはじめとし、年々の用水不足を溜池や地下水により補ってきたが、今池市の人ロの増加や産業の発展に よる都市用水の急速な需要増のため慢性的な水不足をきたしてきた。
 玉川ダムの完成で、洪水や干害の心配はなくなったと思ったのだが、自然はそんなに生易しいものではない。 ダム完成後の昭和47年9月と昭和51年9月には、鉄鉋水や土砂崩れによる大水害が起きている。幸いに 蒼社川の堤防の決壊はなかった。
 また平成6年9月、今治地方の一月余に及ぶ16時間断水は記憶に新しい。この年は雨が平年の半分しか降らず、 9月23日には貯水率9%まで下がり、最低の記録となった。しかし、米等農作物は大豊作となった。
 これら災害もダムのお蔭で最少限で食止めることができたとも言えなくはない。
このダムのため水没した往家78戸、非住家124棟、田畑3669a、山林等3696a、宅地41aである。 水没のため移転したのは、玉川町へ46世帯、今治市32世帯、その他へ3世帯の81世帯であった。  水没地域は元竜岡村の中心地域であったため、役場・農協・学校・診療所等幾多の施設も水没した。  この玉川ダムの完成で、一応治水の量的な面では目的を達することができたと言えるのではなかろうか。  今後の課題は水質の保全、これが難題ではなかろうか。この問題は、玉川町住民のみならず今治地方全員が、 真剣に知恵と汗と金をかけて取り組まなければならないと思う。
 具体的には、森林の保全と育成、下水処理、産業廃棄物は不法処理や不法投棄の厳禁、たばこや缶等ゴミのポイ捨て 厳禁、目にしたら拾う運動の展開等々住民一人ひとりができる事から実行して行くことではなかろうか。
 この事は玉川町の将来を考えると、最も大切で基本的な問題であるとともに、町の活成化にもこの問題を中心に据えて 取り組むべきではなかろうか。

 青井 三郎

玉川ウォッチング