1、法界寺



(6)宝積寺

密厳山宝積寺(清浄院)は弘法大師第二法孫真如親王御弟子宥○法師が平安時代前期の弘仁3年(812)に開山したもので、 玉川町では釈迦堂・仙遊寺・奈良原山。光林寺に次いで古い(玉川町誌による)。
高野山古義真言宗で河野家の祈願所として、多くの末寺を持つ中本山として繁栄してきた。
 ところが、鎌倉時代から室町時代を経て、度々の争議論争により寺院は縮小され、特に室町時代は戦国の世となり、 戦乱と共に境内の諸堂は焼失し、途中無住職時代もあって、現在の建造物は往年の威容をとどめていないのが残念です。(現在新しく本殿が建てられ、美しくなっています。) 
 当寺では、南北朝の争乱時代に、堂々と南朝の年号を使用した大般若経六百巻が、完全な姿で保存され、 転読されているのは全国でも珍しいとのことである。特に南朝の年号「天授」(1375)が多く使用されているが、 この年号「天授」は、楠木正茂・名和長年・北畠顕家・新田義貞など官軍の名将が相次いで戦死してから40年後で、 官軍の勢力が見る影もなく衰えた時期であり、伊予の一角であくまでも大義を守って屈せず南朝の年号を奉じ、 現在まで600年余も保存されてきている。
 当寺の御本尊は不動明王である。不動明王は力強い仏様であって、智慧の利剣と悪魔の跳梁を制止する索を持つ仏様としてまた、 沢山の従者、ことに愛らしい童子を常に脇に置く仏様として親しまれている。
人間が臨終から冥途に向って暗闇の世界を7日7夜の間歩き続けて初7日、初めてお逢いする仏様が不動明王だそうです。
 境内には、樹齢400年以上のイヌマキや柿、高野山から取り寄せたコウヤマキの若木がある。
なかでも、三葉の松「三鈷の松」は財布の中に入れておくと、財布からお金が逃げにくいのだそうで、 高野山では大変な人気かおり、なかなか手に入らないそうです。
皆様もこの三鈷の松を財布の中に入れると共に、お金の使い途を慎重に考えてみられてはいかがでしょうか。
この三鈷の松には、弘法大師の伝説があり、大師が唐に留学した際、帰国後の仏教を広めるための場所を求めて、 中国の海岸から三鈷を投げた。その三鈷が高野山の松に掛ったので、高野山を真言宗の根本道場とした。
その三鈷が引掛った松を「三鈷の松」と言い、「海山松」とも言うお年寄りもいるそうです。(現在三鈷の松はなくなっている)  境内からは、室町時代の造ではなかろうかと言われている五輪の塔が多数あり、 古くから栄えたであろう片鱗が偲ばれる。また、裏山からは隠れキリシタン碑もでてきている。

 青井 三郎
 参考「玉川町誌」
 住職菅真雅氏にお聞きする。

(7)宝積寺の大般若経

 大般若経は、中国の唐の時代に三蔵法師玄奘が玉華宮寺において、漢訳した仏教教典で、 正しくは「大般若波羅蜜多経」という。仏教の真理を体得して、 これを全ての人々に生かそうと励む菩薩の最も重要な実践徳目である般若波羅蜜を説いた多くの聖天を集大成したもので、 仏教の基本原理である「空」の思想があらゆる角度から説かれている。
このお経は、一部600巻、265品(種類)、1297義(内容の数)、60億40万字の膨大な経文である。
 宝積寺の大般若経は、明記されている年号から推測すると、 南朝の長慶天皇の文中2年(1373)から、天授4年(1378)の約6年間に書かれたものが大部分だそうである。
 このように南朝方の年号が堂々と書かれた経文が、完全な姿で保存されていることは、南朝方と高繩半島がいかに密接な関係にあったかが伺えて興味深いものがある。
 宝積寺では、毎年正月15日午後1時から、町内真言宗7か寺(当寺のほか龍岡寺・浄土寺・光林寺・医王寺・仙遊寺・宋福寺)の僧侶により、 国土安穏、除災招福を祈願して転読する大般若祈祷法会が厳修される。
大般若祈祷法会のご本尊・般若十六善神画像は、鎌倉時代(文化庁調査官の鑑定)のものであり、 大般若経600巻は南北朝時代・南朝の年号である文中・天授か数多く記されており、 全国に例がないそうである(束京大学・平泉澄教授の学説)。600巻は200巻ごとに3つの経櫃(南北朝時代のもの)に納められているが、 当日の法会終了後は大般若経を2つの櫃に入れ、2人づつ2組に分かれ法界寺内の各戸を巡る。
善男善女は合掌してその下をくぐり、去年護っていただいたことに感謝するとともに今年の無事を祈願する。
この行事は620年の歴史を持っているそうで、非常に貴重な行事であるといえるのではなかろうか。是非後世に残していただきたいものである。  私も初めてお参りして、はりつめた中での読経、お経をめくる音等々大変感銘を受けた。お経を見せていただいたが、虫が食って穴が開いた所を補修しているもの、 折り目が破けているもの、紙は茶色に変色しているもの等々に古さが偲ばれる。
 帰りに、久しぶりにパチンコをして、早速にご利益をいただいた。しかしその後はさっぱり。これもご利益かも知れない。  なお、町内での大般若祈祷法会は、1月8日に龍岡寺・1月11日光林寺・1月12日医王寺・1月14日栄福寺・1月17日仙遊寺で行われる。

 青井 三郎
 住職菅信雅氏にお聞きする。

玉川ウォッチング