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紙芝居：大松とくそだぬき

これは、畑寺部落のおはなしです。

畑寺の県道を上の方へと上って行くと、下坂本橋という小さな橋があります。<br />
そこから下向いて降りる道は、山越しに鬼原部落へ通じています。

その道のちょうど畑寺と鬼原の境ぐらいなところに、松の木が１本あります。<br />
この松のなんと太いことと言うたら、おせが、4人でかかえるほどです。<br />
この松―かみなりさんが落ちて先の方がないんじゃけど、誰が言い出したか、「大松」と呼んでいます。<br />
この松にはちょっと、おもしろい話があるんじゃって、みんな聞きたいで？

昔々、この大松には、幹に、おおけな穴が開いとって、そこにたぬきの一家が住んどったんじゃとい。<br />
このたぬきどもは、化かすのが、よいようもうて、道を通る人ごってに、わるさをしかけてみんなを、ほとほと困らしとったんじゃ。

ある夏の日のこと、光林寺のお坊さんが、鬼原へせがきに行った帰りの道じゃ。<br />
「今日は、おそなってしもうた。はよ、帰らんかったら、大松がおとろしなる。」<br />
そう言いもうて、帰りよったら、やがて、大松のところまで来た。<br />
今まで蒸し暑かったのに急に背中のへんがゾクッとして、あとを振り返ってみると…

なんとそこには、ぎょうさんきれいなお娘さんが、たっとるじゃあないか。<br />
「お坊さん、お急ぎで、お帰りのご様子、しかし、もう日も暮れかかっております。おなかが、すいているのではないですか。あたたかいおうどんが出来ています。<br />
どうぞ召し上がって行って下さいませ。」今までお坊さんが、聞いたこともないような、かわいらしい声で誘うてくれるし、日暮れて、ええかげん腹もすいとったもんじゃけん、お坊さん、これは「しめた」とばかりに、「ありがたい、ありがたい。では、ごちそうになろうかいの。」
娘さんは、にっこり、笑って「それでは、私の家へ案内しますから、ついて来てくださいませ。」
お坊さんは、いそいそと後からついていったんじゃそうな。

雑木林を歩いて行きよると、やがて御殿のように、立派な家があってのぅ。<br />
お坊さんは、中に通されて座敷に座っとると、やがて娘さんが、ぬくうて湯気が出よる、おうどんと、お饅頭を持って来てくれたんじゃ。

「こりゃあ、ぬくうて、うまそうな、うどんじゃ。いただこう。」お坊さんは、つるつると、おうどんを食べると、そのおいしいこと。<br />
「なんぼでも入るぞん。もう一杯いただけるかん？」

「はいはい、どうぞ召し上がれ。お饅頭も、いっぱいありますのでどうぞ。」<br />
娘さんが勧めてくれるもんじゃけん、お坊さんも、よけい食べたんじゃ。<br />
そのうち腹もいっぱいになって、ねむたなってしもうた。そして本当に、横になって、寝てしもうたんじゃとい。<br />
なんと朝まで…。<br />
朝つゆが、ポツンと落ちてお坊さん目が覚めた。

「こりゃあ！なんじゃ？！」お坊さん、びっくりぎょうてんじゃ！お坊さんの足元には、木の葉っぱの上にのった、何匹ものみみずと、かしわの葉につつまれた馬のふんが、あったんじゃ。

「大松のくそだぬきに、一ぱいくわされたわい。」お坊さんは、悔しゅうて、悔しゅうて……。<br />
寺に帰って、口をゆすいだけど、いやな味はなかなか消えなんだそうじゃ。<br />
松の木のかげで、たぬきらが笑いよるのが見えるようじゃねぇ。<br />
　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おしまい

これは、畑寺部落のおはなしです。

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